様々な歯科治療によって咀嚼・発音・嚥下などの口腔機能を回復できたとしても、審美的満足感が得られなければ、心身ともに健康を取り戻したという実感は得られにくいのではないでしょうか?
このコーナーでは、審美治療について説明します。
■審美歯科治療とは
日本歯科審美学会では、「歯科審美学とは、顎口腔系における形態美・色彩美・機能美の調和を図り、人々の幸福に貢献する歯科医療のための教育および学習に関する学問体系である(日本歯科審美学会教授要綱)」と定義しています。
治療と学問とは少し異なりますが、言い換えますと、口の中や口もとの見た目の改善により、患者さんのクオリティー・オブ・ライフに貢献するということです。
実際の審美治療は、歯の汚れを落とすクリーニングに始まり、金属を白い材料に換える処置、歯並びを整える矯正、歯の色を白くするホワイトニングなど、さまざまな方法で審美的な問題点を改善します。
残念ながら、保険適応ではない治療が多く、主に自費診療となります。
■被せものの種類
気になる1本の歯を自然な白さに回復することも、審美治療の一つです。
まず、その方法や、材料について説明します。
上記のセラミックスは、ポーセレン、瀬戸、陶歯とも呼ばれています。とても硬く、透明感があり、変色しない材質です。その冠の作り方も様々で、セラミックスだけで作るオールセラミックス冠、金属の裏打ちがあるクラウンはメタルボンド冠、白く堅い材質の裏打ちがあるジルコニアボンド冠などがあります。歯の上に薄く貼り付ける、ラミネートベニアにも使われます。
ジルコニアは、人工ダイアモンドのキュービックジルコニアと同じ組成をもつ新材料です。とても堅いため、作業工程や調整に高度な技術が必要です。しかし、まだ色調の面で劣っており自然感が得られにくいのが欠点です。あまり目立たない一番奥の歯によく用いられます。
複数の歯を治療する場合には、これらをの中から最適なものを選択して、全体的に調和のとれた状態になるよう治療を進めていくことになります。
これから、矯正治療、ホワイトニング、白い詰め物、かぶせ物を施して全体的に治療を行った症例を紹介いたします。
ここに載せられた写真は全て、一人の患者さんのものです。矯正による、かみ合わせと歯並びの治療に3年、ホワイトニングで全体の歯の色を白くするのに6ヶ月、そして白くなった歯に合わせた白い材料への取り替えに4ヶ月、その間、歯周病や虫歯、根の治療も行っています。トータルで約5年の期間を要しました。
治療期間は患者さん毎の口の中の状態により大きく変動します。しっかりと基本的な口腔疾患(虫歯や歯周病など)の治療を施さずに、安易に「美しさ」だけを求めても意味がありません。
適切な治療計画を担当医と相談した上で治療を行うことが肝要です。